作成日:2005/01/14



国保財政の現状を考えよう

 これまで、9回にわたって「シリーズ国保」を連載してきましたが、いよいよ終盤にさしかかってきました。そこで、これまでの連載中に出てきた「キーワード」をもとに、もう一度問題点を整理します。この機会に、連載を見逃してしまった方も、現在牛久市の置かれている国保財政の現状を理解していきましょう。
国保は赤字です
 牛久市の国民健康保険(国保)は赤字です。民間の会社に例えれば、既に倒産してしまっています。
 ここでいう「赤字」とは、一般会計から赤字補てん分の繰入金をもらわなければ、やっていけないということを意味します。繰入金とは、本来ルールに基づくのが原則ですが、赤字を埋めるために仕方なくルール外の繰り入れを行っています。平成15年度決算額で約2億円にもなりますが、この「赤字補てん」のためのお金には、市民の方々が納めた税金が使われています。つまり、国保の被保険者の赤字を埋めるために、一般サラリーマンなどの税金が使われているのです。

国保は相互扶助です

 そもそも、医療保険とは相互扶助の精神であり、困ったときにお互いに助けたり、助けられたりする制度です。窓口の苦情で「一回も病院に行っていないから国保税を支払いたくない」とか「退職してお金がないのに払えるわけがない」などとおっしゃる方が多く見受けられます。
 しかし、よく考えてみてください。今まで健康だったからといって、これからも健康な状態が続く保証はありません。また、退職して給与収入が無くなるからといって、収入がまったく途絶えるわけではありません。前年の所得が算定基礎であるため、退職後の最初の年度だけはどうしても国保税は高くなってしまいます。でも、それ以降は所得や固定資産に見合った応分の負担となります。社会の一員として、医療保険に加入し、納税を行うのは皆さん自身の安心のためなのです。別に市役所のために納税しているわけではありません。一部の大人たちが、自分勝手な理由で納税の義務を怠っていては、その姿を見ている子どもたちはどのように感じるのでしょうか。若者の間での、年金未納問題に象徴されるように、相互扶助の精神が薄れてきています。多くの市民は、生活を切り詰め、苦しい家計をやり繰りしながらも税金を納めています。だからこそ、負担すべきものは負担するのは当然のことです。公平性を堅持してこそ、健全な国保制度が存続されるのです。

赤字の原因は!

 赤字の原因は、既に掲載したとおりさまざまな問題によるものです。特に増え続ける滞納は、最も深刻な問題です。牛久市において国保税収納率は、平成10年度以降ほぼ横ばいの状況が続いており、滞納額は平成15年度末累計で約6億円にも達しています。
 反面、老人の医療費増加などに伴い、歳出の金額は年々増え続けているのが現状です。医療費は増えるけれども税収が伸びない。このジレンマの中で滞納者が増えると、どうなるのでしょうか。お金が足りなくなり、医療費が支払えません。すなわち、赤字になるわけです。今は、どうにか一般会計から赤字補てん分を繰り入れて、かろうじて運営をしていますが、今後はそれも難しくなることが予想されています。
 新聞やテレビのニュースなどでもご存じのことと思いますが、国の三位一体の改革(※)が行われようとしています。その中で、地方交付税改革などが議論されています。試算によると、地方交付税が減額されることにより、今後一般会計そのものが非常に厳しい状況に追い込まれます。母体である一般会計が赤字になった場合、赤字の国保会計にお金を出すのは、無理に決まっています。無い袖は振れないのです。国保会計が赤字だからといって、一般会計から赤字分を補てんしてもらうといった今までの構図が、既に許されない局面に差しかかったといえます。

皆が真剣に考えなければ

 さまざまな角度から、シリーズでお伝えしてきました。これからは、市民と共に知恵を絞って考えていかなければなりません。赤字を脱却して、一般会計から独り立ちをするにはどうしたらよいのか。決して容易なことではありません。だからこそ皆で真剣に考えなければなりません。現行税率の問題もしかり。増え続ける滞納額の問題もしかり。高額医療費の問題もしかり。増加する老人医療費の問題もしかり。複数の医療機関を渡り歩く多受診・頻回受診の問題もしかり。セルフメディケーション(自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること)、終末医療の問題もこれからの大きなテーマです。
 安易に複数の医療機関で検査を繰り返してしまった結果、レントゲン写真で被爆してしまったという深刻な事例もあります。検査漬けで大切な体を傷つけてしまい、揚げ句の果てには、高い医療費を支払わなければならない。踏んだり蹴ったりとはこのことです。ある患者が「風邪をひいて医者にかかったら、点滴もしてくれない、薬もろくにくれないからヤブ医者だ」といった声があります。欲しがるままに薬漬けや検査漬けをしてくれるのが、本当に名医なのでしょうか? 皆さんはこの事例についてどう思われますか? これでは、いくら国保税を払っても切りがありません。だからこそ皆で考えなければならないのです。
 「かかりつけ医」(日ごろから家族全体の健康や病気に対して、適切な指示や助言をしてくれる医師)を設けて、正しい受診に心掛けるのも医療費節減の知恵です。保健センターに行って、健康相談を受けるのも大切なことです。命の記録であり生きている証である健康手帳をもっと活用してください。そして皆が、医療の問題や健康問題について話し合ってください。夫婦で、親子で、家族で、地域で、それぞれが真剣に考える時期にきていると思います。

(※)三位一体の改革…「地方にできることは地方に」との原則に基づき、歳入・歳出両面にわたって国の関与を縮小し、地方の権限と責任を大幅に拡大するための改革。具体的には、A国庫補助負担金の廃止・縮減などB地方交付税の改革C国から地方への税源移譲。
※写真はイメージです。

問い合わせ 市医療年金課 電話029-873-2111(内線)1725

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