作成日:2004/12/14



与えられる医療から、参加する医療へ

 増え続ける医療費を減らすために、何かコツはないのでしょうか。今、医療の世界でも「自己責任」が叫ばれています。これまでは病気やけがをしたら病院にばかり頼ってきましたが、皆さん一人ひとりが主役となって、少し意識するだけで医療費を減らすことができると期待されています。
 意識を少し変えるだけで、自分の医療費も減らせて、体も健康になれば言うことありませんよね。それでは、具体的にどんなことを意識していけばいいのでしょうか。

セルフメディケーションって何?

 WHO(世界保健機関)の提言によると、健康づくりは他者に依存したり、専門家だけが主張するアプローチから脱皮することが必要だとされています。これからの健康づくりにはセルフメディケーション、つまり「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」が必要だと言われています。例えば、病気の予防や軽い治療などに対し、身近にあるOTC薬(Over The  Counter 街の薬局などで買う薬)などを利用して、自分の知恵と責任で病気を治すことです。皆さんも軽い風邪をひいたとき、薬局で風邪薬を買って飲み、治したという経験があると思いますが、それもセルフメディケーションの一つです。「21世紀はセルフメディケーションの時代」とも言われています。その背景には、破綻寸前の医療保険制度の問題があります。

自分の健康は自分で守る

 平成11年度の国民医療費は初めて30兆円を超え、年間一人平均約24万円もの医療費を支払っていますが、これが2025年には、なんと約100万円になるとも言われています。
 そのような状況のなかで、OTC薬の有効活用や、適正な食事や運動、休養や栄養も含め、病気の治療や健康の維持・増進を自らの責任で行う必要が出てきました。このようなセルフメディケーションによって、健康づくりと医療費削減が期待できるのです。
 もちろん、重い病気に対しては、速やかに医師の治療を受けることが重要です。(注1)

主役はあなた

 セルフメディケーションの主役は皆さん一人ひとりです。これまで私たちは病院にばかり頼りきって、積極的に医療のことを考えてこなかったのではないでしょうか。これからの医療は「与えられる医療から、参加する医療」へと自立していくことが必要です。
 まずは、自分の体の状態を把握しましょう。そのためには、健康診断などを定期的に受け、その結果をきちんとケアするために、かかりつけ医に相談しながら、生活習慣の見直しを行いましょう。また、体重、体脂肪、血圧など体調を計る機器や検査薬などを上手に活用し、自分の健康をチェックして健康管理の意識を高めていきましょう。そして、調剤薬局などでお薬をもらうときは、「お薬手帳」にもきちんと記録を付け、積極的に残しておきましょう。そのような小さな努力の積み重ねが、後で自分の健康へとつながっていくのです。

かかりつけ医とは

 皆さんは、自分のかかりつけ医をもっていますか。かかりつけ医とは、日ごろから家族全体の健康や病気に対して、適切な指示や助言をしてくれる医師のことです。
 これまでは、家庭医やホームドクターとも言われていましたが、最近は「かかりつけ医」と呼ばれることが多くなっています。かかりつけ医を選ぶ際に、特別な手続きはいりません。皆さんが、健康に関する相談を気軽にできる医師を選べばいいのです。つまり、信頼していつも診てもらえる医師なら、診療科などにこだわる必要はありません。ポイントとしては、自宅から近く、病気の治療法や薬の名前などを丁寧に説明してくれるような医師が好ましいでしょう。
 それでは、かかりつけ医は何をしてくれるのでしょうか。まずは、健康に関する相談や、医学的な疑問の良き相談相手となってくれます。また高齢者の方が介護保険サービスを受けるようなときには、「主治医意見書」や、特別養護老人ホームの入所などの際に必要な「診断書」を発行してくれます。さらに、入院や高度な検査など専門的医療が必要な際、かかりつけ医は診療情報提供書を発行して、最適な病院を紹介してくれます。
 このように、必要に応じて最適な医療機関を紹介してくれるのが「かかりつけ医」の大きな役割です。

なぜ、かかりつけ医が医療費削減に?

 かかりつけ医がいれば、家族全員の健康管理が一カ所でできるため、多受診が防げたり、検査・投薬などの重複する無駄が省けます。また、病気の早期発見、治療ができるので、医療費も少なくて済みます。医療の質を落とさずに、医療費を削減するには、どこかで努力が必要です。やはり、一人ひとりが治療よりも予防に力を注ぎ、健康に対して投資をしていくことが重要なのです。軽い病気は自分で治し、不安がある場合には早急にかかりつけ医に相談するという段階的な医療の考え方が重要です。

健康寿命を伸ばしましょう

 日本は世界一の長寿国となりました。今までは、寿命という生存の量だけに注目がされてきました。しかし、今世界で注目されているのは単なる生命の量だけをはかる平均寿命ではなく、「健康寿命」なのです。健康寿命は、平均寿命から日常生活を大きく損ねる病気やけがの期間を差し引いて算出したもので、2002年WHOの報告では、日本人は世界一で、約74歳となっています。
 高齢社会を迎えて、生きることへの内容的な水準が高まり、いわゆるQOL(Quality Of Life 生活の質)が強く認識され始めています。生活の質の向上のためには、今まで以上に「自分の健康は自分で守る」というセルフメディケーションの意識が必要なのです。
1.自分の健康は自分で守る
2.自分の病気(軽度)は自分で治す
3.自ら病気を予防する
 以上のことを少しでも意識し、実践することで、自らの健康寿命を伸ばしていきましょう。一度だけの人生ですから、楽しく、長く、元気に過ごしていきたいですよね。
(注1) 市販薬使用に関しては、購入時に薬剤師などに相談する、添付文書をよく読み理解する、得られた情報に基づき適正使用に努める、有害事象が発生した場合は、薬剤師などにその旨を伝えるとともに、必要な場合は早期に受診する、などの注意が必要となります。

問い合わせ 市医療年金課 電話029-873-2111(内線)1725

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