作成日:2004/11/11



増え続ける老人医療費

 75歳以上の方は老人保健という制度の適用を受けています。老人保健では、病院にかかるときの自己負担が1割または2割で、一般の方(3割)よりも少なくて済みます。現在、日本では高齢者の人口が急激に増えており、それに伴う老人医療費の増加が、大きな問題となっています。医療費を少なくするには、どうすればいいのでしょうか?

老人医療費は若い人の4倍!

 平成14年度の牛久市の国保老人一人あたりの医療費は約70万円で、若い人の医療費約18万円と比較すると、およそ4倍も多くかかっています。市では国保加入者のうち約2割が老人ですが、今後さらに伸びていくことが予想されています。
 このように、老人の医療費が増大しているのには、老人の数そのものが増加しているというほかにも、さまざまな要因があると考えられています。例えば、「社会的入院」や「多受診」などが医療費増加の要因となっているのです。

社会的入院とは

 社会的入院とは一般的に、病気が治り、それ以上の治療は必要ないと判断されるようになっても、退院後に介護する者がいない、自宅のある地域に必要な医療機関がない、あるいは戻る家そのものがない、などといった「社会的」な問題で入院し続けている状態を指します。通常、病院や診療所に6カ月以上の長期にわたって入院する高齢者を言います。

なぜ社会的入院が問題なのか

 社会的入院で一番問題なのは、介護が必要な老人にとって、本当にふさわしいサービスが提供されないことにあります。病院は治療を目的とする場であり、要介護の老人が長期に療養する場としては不十分です。狭い病床・病室に入れられた結果、寝たきりを誘発・重度化するなど、心身の回復・自立がかえって妨げられる恐れがあるとして、かねてから強い批判があります。
 それに加え、医療費増加の原因となることにも問題があります。入院している方の中には、必要性があり入院している方がほとんどだと思われます。しかし、長期入院している65歳以上の高齢者のうち、約5人に1人がこの「社会的入院」とも言われているのです。一般病院のコストは特別養護老人ホームや老人保健施設に比べて高いために、医療費の無駄が発生しています。病院は本来、病気を治すことを目的にしており、介護や生活の場の代わりではありません。社会的入院と言われるこの状況は、不必要な投薬・検査など、過剰な医療を受ける恐れもあり、総じて老人医療費の高騰を招き、医療保険制度の財政を悪化させている一因となっています。

老人医療の背景には

 社会的入院が生じる背景は、必ずしも患者さん本人だけの問題ではありません。2000年4月から介護保険制度が始まりましたが、退院後、十分な介護施設が用意されていないことも、社会的入院が減らない一因と言われています。
 一方、患者さん側の問題として、病院の「サロン化」が指摘されています。例えば、通院者間で仲間関係が形成され、待合室が社交場化したり、単身世帯の高齢者が増加し、寂しさを紛らす目的で長期入院をしたり、病院にかかるといった例も報告されています。
 もともと、日本では1973年から1982年まで老人医療費が無料だったこともあり、保健、福祉と比べ、医療偏重の高齢者ケアを出現させた結果、薬漬け、検査漬けなどが問題となってきました。そのような結果、必要以上に病院に通ってしまう高齢者が増えてきてしまったとも言えます。
 日本は世界的にみても、人口あたりの病床数が高水準に確保されている反面、要介護の老人を最終的に収容して、必要なケアを提供する施設の不足などを背景に、病院が「福祉施設的な機能」を担ってきました。また、老人ホームに入所させることへの対世間的な抵抗が、本来は医療ではなくケアを必要としている老人を病院に入所させる傾向にさせたとも言われています。
 一方、病院側も医療費が出来高払いであるため、空のままよりも入院者数が多いほうが良い、という経営上の問題が、社会的入院を助長した背景にあるとも言われています。

入院が6カ月を超えると自己負担が大幅アップ?

 入院期間が6カ月(180日)を超えると、入院基本料の15%が保険の効かない自己負担になります。この自己負担分は高額療養費の対象外なので、入院基本料が1日1万円程度であれば、月4?5万円の負担増になります。しかも、入院期間にはほかの病気の入院も通算されます。
 これは前述の通り、あまり治療の必要のない方の長期入院、いわゆる社会的入院を防ぐための措置です。そのため、難病の患者さんなどは適用外とされています。
 なるべく、必要のない長期入院は避けるのが賢明です。どうしても長期入院が必要な方であれば、認定されれば介護保険の利用が可能(65歳以上の場合に限る)な場合もあるので、申請を考えてみたらいかがでしょうか?

保健センターを利用しましょう

 市役所の敷地内に市保健センターがあるのはご存じでしょうか。市民ドックや、赤ちゃんの健診などを受けている方はご存じのことと思います。市保健センターでは、病気の早期発見のために、健康に関する悩み相談、食事のバランス相談や、こころの健康相談、ウォーキング講座など、常に皆さんの健康管理のお役に立てるよう専門の職員がおります。病院に行くのも一つの方法ではありますが、病気になる前にご相談に乗れることもありますので、お気軽にご利用ください。

医療費削減に向けて

 老人の医療費削減にはA在宅医療の浸透、B予防などの保健活動の活発化、C生き甲斐を持って過ごせる環境整備、など複合的な方策が必要です。例えば、家族や友人、あるいは介護担当者が頻繁に高齢者と接することにより、高齢者の体の不調を初期段階で察知することが可能となります。病気になったとしても、早期治療やリハビリにより重症化させないこともできます。また、病院以外での高齢者同士が交流する場を提供することにより、高齢者の病院訪問を減らすことも期待できます。
 今後もより一層、市役所(保険・福祉)、病院(医療)、高齢者が三位一体となって自己改革に取り組めるよう努力し、生活・医療環境の改善や予防活動を通じて、医療費削減を推進していきたいと思います。

おわびと訂正

 平成16年10月15日号の中で、つくばセントラル病院の日帰り人間ドックの基本料金が39900円とありますが、38850円の誤りです。おわびして訂正いたします。

問い合わせ 市医療年金課 電話029-873-2111(内線)1725・1726

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