作成日:2004/06/11


シリーズ「国保」 迷える国民健康保険

窮地に立たされている国保財政


 「広報うしく5月15日号」では、国民健康保険制度の概要についてお知らせしました。今回は「窮地に立たされている国保財政」の現状についてお知らせします。
 国保(国民健康保険)は、年々増加する医療費の支払いに見合うだけの収入の確保がままならない状況だということをご存じでしょうか。牛久市にとって大きな問題となっているこの状況を、シリーズ「国保」と題して、毎月15日号の広報紙上でお知らせしています。

全国の国保財政状況

 皆さんは「赤字」と聞いて何を思い浮かべますか? 会社が「赤字」だと聞くと、「倒産してしまうのでは」とか「経営が良くないのでは」などと心配になると思います。「赤字」を辞書で調べると、『収入よりも支出が多くなること。欠損』とあります。
 実は当市の国保を含め、全国の市町村国保の赤字額は平成14年度厚生労働省速報値で、4188億円(前年度比22・6%増)となっています。そして、3224団体ある市町村国保のうち2051(63・6%)もの団体(保険者)が赤字となっています。(注1)
 それでは、国保において「赤字」とはどのような状況を言うのでしょうか。
独立採算制
 国民健康保険は、保険税、国庫負担金などの収入金を財源として、医療費の支払いなどの事業を行っています。このため、市町村では特別会計を設けて、独立採算で経理しています。事業といっても、民間会社の営利事業とは異なり、収益を目的とするものでないことは、言うまでもありません。

特別会計

 特別会計というのは、特定の収入によって、特定の支出に充てるために、一般会計から独立して経理を行うものです。しかし、国保会計は完全な独立採算が要求されるものではありません。なぜなら、地域住民の福祉増進の一端を受け持つものであり、一般の福祉行政と無縁ではないからです。例えば、老人医療や、乳幼児医療のように、一般の福祉あるいは保健行政と重複したり、共同して行ったりする部分があるからです。そこで負担の公平という見地から、必要に応じて、財源の一部を一般会計から国保会計へ繰り入れています。

繰入金とは

 国保には、一般会計からの繰入金というものがあります。皆さんの家庭に例えれば、二世帯住宅に住む子ども夫婦が、生活が厳しいので、同居の両親から家の補修費や光熱水費、生活費の一部などを援助してもらっているような状態です。その際、親子関係でもルールを取り交わすのと同様に、一般会計と国保会計の間にもルールがあります。
 各市町村共通の繰り入れとしては、国と地方の財源調整の一環として、さまざまな経費(注2)について一般会計から繰り入れることになっています。

平成14年度の繰入金決算額

 平成14年度牛久市国民健康保険特別会計が一般会計から繰り入れした総額は、2億8967万3千円にもなります。実は、この中にルール外の「赤字補てん」繰入金1億3710万7千円が含まれているのです。繰入金総額の約47%は赤字補てんが目的なのです。なお、平成15年度決算見込額では、「赤字補てん」繰入金は約2億円となります。全国の市町村国保でも、平成14年度では2318億円もの「赤字補てん」の繰り入れがされていて、当市と同様に苦しい財政運営を余儀なくされているのです。
 それでは、なぜこのような「赤字」が発生してしまうのでしょうか? 広報うしく7月15日号「落ち込む保険税収入」で見ていきます。

(注1)

 「収支差引額」から「国庫支出金精算額」などを調整した「精算額控除後差引額」から、「基金繰入金」および「繰越金」などを除いたもの(赤字補てんを目的とする一般会計繰入金を除く)が赤字の団体。

(注2)

A 事務費の繰り入れ…国民健康保険特別会計での事務に対する費用
B 保険基盤安定制度の繰り入れ…低所得者の保険税軽減分に対する財政援助
C 国保財政安定化支援事業の繰り入れ…低所得者、病床数、高齢被保険者が多いなど、特別な事情のある団体(保険者)に対する支援措置
D 出産一時金の繰り入れ…出産育児一時金30万円の3分の2の繰り入れ
E 福祉医療の波及分…市町村独自に実施している、いわゆる福祉医療が国保財政に大きな波及を与えている部分の繰り入れ

問い合わせ 市医療年金課 電話029-873-2111(内線)1725